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ロッテリア 大学生の声に密着、顧客視点の改善サイクルで業績回復

経営再建中のハンバーガーチェーン大手、ロッテリア(東京・渋谷区)の業績が上向いてきた。2007年度上期は営業黒字に転換。さらに2007年 11月30日に関東48店舗で先行発売した「絶品チーズバーガー」がヒット商品となり、再建に弾みをつけた。今年3月14日から4月4日にかけて順次、全国の店舗での取り扱いを始めているところだ。

 「原油や材料費や家賃などの高騰が懸念材料だが、今の社員全員の仕事の進め方やモチベーションがあれば、きちんと将来への投資をしつつ、親会社のロッテと約束している2008年度(3カ年計画のゴール)の業績目標をクリアできる可能性が高い」と篠崎真吾社長は話す。篠崎氏は経営支援会社リヴァンプ(東京・港区)から、2006年に派遣されてきた。以前は企業再生案件に強い公認会計士として活躍し、財務に強い。

 ロッテリア復調の秘訣は、執行役員などの幹部やマネジャーが事あるごとにVOC(ボイス・オブ・カスタマー:顧客の声)を聞きに行き、顧客視点で店舗と接客、商品を見直し、それらを支える本社業務の改善をスピーディーに繰り返してきたことにある。

 同社の湯浅智之執行役員は「この2年間で何百回と業務改善を積み重ねてきたので、社員みんなに顧客志向が身についてきた」と見る。かつてのロッテリアは、顧客よりも競合の日本マクドナルドの動きばかりを意識し過ぎ、計画性のない低価格戦略によって利益の出ない企業体質に陥っていた。
顧客の生の声には言い訳のしようがない
 新生ロッテリアの幹部やマネジャーが特に参照する機会が多いVOCは、大学生の声だ。「ハンバーガーの主要顧客は中高生、F1・M1層(20~34歳の女性・男性)、小さな子供のいる母親の3つ。大学生は『お金はないけど、美味しいものを食べたい』という、中高生とF1・M1層の両方のニーズを持つ。地域によっては主婦の声も聞いているが、大学生の声を検証する意義は大きい」(湯浅執行役員)。

 しかも、店舗にアルバイトとして働く大学生が多数いることもあって、大学生のVOCは集めやすい。「ただし、大学生と乾杯して盛り上がれるくらいでないと、彼らから本音を引き出すのは難しい。彼らが普段から何を考え、何を求め、何を話題にしているかを知る努力をしないといけない」。湯浅執行役員は有益なVOC情報を引き出すコツをこう明かす。

 新生ロッテリアではこれまでに、大学生を組織化したプロジェクトを2つ実施してきた。1つは2007年3月に発売した4つの新作スイーツの開発・宣伝プロジェクト。もう1つは前述の絶品チーズバーガーの宣伝プロジェクトだ。2つのプロジェクトに参加した数十人の大学生たちは、ロッテリア社員の大学の後輩やその友達が中心となっている。

 湯浅執行役員は2つのプロジェクトを通じ、大学生の発想の斬新さや、本音で製品を評価してくれる姿勢に感激した。「スイーツを開発し始めた当初、『ロッテリアは競合と比べると、やっていることの意味すら分からない』と耳の痛いことを言われた。でも企画段階ではこれくらい遠慮なく言われるほうがいい」。プロジェクトの初期段階でじかにここまで言われれば、どんなに思い入れのある企画でも言い訳せずに抜本的に見直そうという気になるからだ。プロジェクトの後半で痛い意見を言われても、後戻りはしづらい。

 絶品チーズバーガーの宣伝プロジェクトでは、早稲田大学や慶應義塾大学など5組の大学生チームが都内の1店舗ずつを担当し、2週間の期間中に「この新商品の販売数」「各チームが立ち上げた販促サイトの閲覧数」「試食チケットの回収数」を競うコンテストの開催を計画した。
宣伝活動に学生や主婦など“顧客の力”を活用し、大ヒットしたロッテリアの「絶品チーズバーガー」 宣伝活動に学生や主婦など“顧客の力”を活用し、大ヒットしたロッテリアの「絶品チーズバーガー」
宣伝活動に学生や主婦など“顧客の力”を活用し、大ヒットしたロッテリアの「絶品チーズバーガー」。経営再建途上にある同社は、この2年間のファストフード事業における仕事のやり方の改革の集大成として取り組んだ同商品の開発プロジェクトを通じて、「売れる商品作り」の成功体験を積むことができた
[画像のクリックで拡大表示]

 新商品の予想外の売れ行きによって、実際は「閲覧数」だけで勝負することになったが、きちんと順位を付けて表彰式を開催。コンテスト後も、学生たちは各店舗で宣伝活動に関与している。学生たちは大学のOBやOGで有名ブロガーとなっている人に協力を依頼したり、午前6~7時くらいから街頭でクーポンを配布してオフィスへのデリバリーに対応したりするなど、フットワークの軽さを発揮した。「活躍の場を与えれば、学生はすごいパワーを発揮する」と湯浅執行役員は再認識した。

 VOC情報に真摯に向き合い、商品や業務の改善を愚直に繰り返す。そんなVOC経営が軌道に乗るまでには、実は大きな転換点が2度あった。

 最初の転換点はリヴァンプが経営支援を始めた時に実施したグループインタビューだ。幹部とマネジャーに生の声を聞く重要性を知ってもらうべく、数人の消費者グループにミラールームでロッテリアについて自由に語ってもらった。幹部とマネジャーは2日間で計8グループの話を部屋の外から聞いていたが、耳を覆いたくなる発言の連発。「ロッテリアってまだ潰れてなかったの?」という辛辣な言葉まで出てきた。この経験によって、幹部とマネジャーは「自分たちは誇りを持って仕事をしてきたが、市場ニーズと乖離していた」ということに気づいた。

 もう1つの転換点は、リヴァンプから来た篠崎社長や湯浅執行役員などが、VOC情報の使い方を正したことだ。以前は、PDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルの「P」を作成する段階で、VOC情報が企画や数値目標を立てるうえで恣意的な論拠に使われていた。そのため議論が堂々巡りとなり、みんなが疲弊するだけでPDCAサイクルが回らないという事態が目立った。だから、VOC情報は「C」で使うことを意識づけたのである。

 もちろん、戦略や業務を遂行する際、PDCAサイクルのどの部分で重点的にVOC情報を活用するかは、企業の置かれている状況によって異なる。だが、上手に使えばVOC情報がPDCAサイクルを素早く確実に回すための武器となるのは間違いない。

 篠崎社長は「かつての社員は『お客様を100%満足させることは難しい。美味しいと言ってくれても、どこかに不満を持つ人が必ずいる』と最初から弱気な姿勢だったが、今は100%の満足を達成しようと努力する。そのために徹底的にお客様の声を聞いて、細かな改善を積み重ねていく。そうした姿勢が現場(店舗)の士気や自信の向上にもつながっている」と話す。自身の経営方針に確かな手応えを感じている。

大学生の声に密着、顧客視点の改善サイクルで業績回復
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20080326/297090/
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